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2006年07月27日
 ■ 金銭の時間的価値:今日の100円と明日の100円の違いとは?

レイナ:「あー、交通費を経理に請求するのを忘れてた。まあ、面倒くさいし、また明日でもいいか。」

タツヤ:「レイナちゃん、そんなこと言ってて大丈夫かな?今日もらう交通費と明日もらう交通費には価値の違いがあるのを知らないんじゃないの?」

レイナ:「えっ、交通費を今日もらうのと明日もらうのじゃあ金額が違うってことなんですか?大幅に減額されるなら今日申請しますけど、まさか金額が変わるってことはないでしょう。」

タツヤ:「ファイナンスでは「今日の100円は明日の100円よりも価値がある」とされているんだ。だから同じ金額であれば1分1秒でも早く手に入れた方が価値が高まるんだよ。」

レイナ:「でも同じ金額でしょう?たった1日の違いでそんなに価値が変わるとは思えないですけど。」

タツヤ:「そうかな。たとえばレイナちゃんが今日交通費を請求して現金を受け取った後、銀行の口座に入れたらどうなる?」

レイナ:「そうね。今は銀行の預金なんて金利は雀の涙ほどだけど、先日日銀がゼロ金利を解除したことで預金金利が100倍とか200倍になったというニュースもあったし、小額でもいくらかの利息はつきますよね。」

タツヤ:「まあ、うちの会社には起こりえないと思うけど、明日会社が急に不渡り手形を出して交通費の立替分を踏み倒される可能性だってあるし、レイナちゃんが購入しようとしていた商品が、急に値上がりして1日でも早くお金を手にしていれば買えたであろう商品が購入できなくなる可能性だってあるだろう。つまり、将来のお金の価値には不確実性が伴うっていうことになるんだ。」

レイナ:「タツヤ先輩にそこまで脅されれば、「今日の100円の方が明日の100円より価値がある」っていうのは真実味が出てきますよね。」

タツヤ:「そうだろう。じゃあ、実際に時間にはどのくらいの価値があるか実際に計算してみようか。たとえば、市場の金利が5%とすると今日受け取る1万円と1年後に受け取る1万円にはどのくらい価値の差があると思う。」

レイナ:「今日1万円もらって銀行に預けたら5%の利息がついて1万500円になるわけでしょう。ということは1年後には500円の価値の開きができるということになりますね。」

タツヤ:「レイナちゃんの計算だと1年後には500円の価値の違いが生じることになるね。じゃあ、次は1年後の1万円を今日の価値に引きなおしてみようか。このように将来受け取るお金を今日の価値に引きなおすことは貨幣の現在価値って呼ばれているんだ。」

レイナ:「貨幣の現在価値か。将来と現在の貨幣の価値は違うっていうことからそのような考え方をすることができるんですね。その場合は、市場金利が5%ですから、1年後の1万円の現在価値を求めるには1万円を105%で割ればいいわけですよね。そうすると9524円が現在価値っていうことになりますけど。」

タツヤ:「そうだね。今レイナちゃんが計算したようにN年後に受け取るお金の現在価値を求めるには将来受け取る金額を(100%+金利)のN乗で割り戻せばいいんだ。公式にすると(現在価値)=(将来受け取る金額)÷[(100%+金利)×N乗]ということになるんだけどね。」

レイナ:「でもタツヤ先輩、そのような現在価値の算出方法を知ってどんなことに応用できるんですか?」

タツヤ:「うん、たとえば年金の問題。市場金利が5%の時、政府が1年後に1万円受け取るか、今日9500円受け取るか選択を迫った場合などはこの現在価値で同じ評価軸の上に立って判断する必要があるだろう。」

レイナ:「この場合は1年後の1万円の現在価値は9524円ですから、今日の9500円と比べて1年後の1万円は今日の価値で24円高いという結果になりますね。ということはタツヤ先輩の言ったような事例の決断を迫られたら、1年後の1万円を選ぶ方が賢明な選択になるというわけですね。」

タツヤ:「そう。このように受け取る期日の違うお金を比較するときは現在価値という考え方を用いて基準を合わせて比較することが重要になるんだ。「今日の100円は明日の100円よりも価値がある」ということを肝に銘じておけば交通費の請求を1日でも伸ばすことが自分にとって不利益となることがこれでわかったかな。」



【MBA講座:今回のTake Away】
 

◆金銭の時間的価値とは?
→今日の100円は明日の100円と価値が違うという概念

◆事例:今日の1万円と1年後の1万円の価値の違い
(市場金利が5%の場合)
今日の価値→1万円
1年後の価値→1万円×105%=1万500円

◆貨幣の現在価値とは?
→将来の金銭的価値を現在の価値に引き直すこと

◆事例:1年後の1万円の現在価値
(市場金利が5%の場合)
1万円÷105%=9524円

◆貨幣の現在価値の公式
(現在価値)=(将来受け取る金額)÷[(100%+金利)×N乗]

◆現在価値の利用法
→たとえば年金問題などで、市場金利が5%の時、政府が1年後に1万円受け取るか、今日9500円受け取るか選択を迫った場合などは現在価値で同じ評価軸の上に立って判断することができる。

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2006年07月20日
 ■ コーポレートガバナンス:不祥事で名を上げる企業と名を下げる企業の違いとは?

レイナ:「タツヤ先輩、最近湯沸かし器の故障事故で多くの人が亡くなったことが話題になっていますね。」

タツヤ:「そうだね。何でも20年以上前に最初の死亡事故が起きているのに企業側でほとんど対策を怠っていたというずさんな事件だね。」

レイナ:「そういえば。去年松下電器も同じような死亡事故があったわね。確か古い石油ファンヒーターによる一酸化炭素中毒だったと思うけど・・・」

タツヤ:「松下電器の場合は死亡事故の報告を受けた段階で経営陣が草の根を分けてでも全石油ファンヒーターの存在を明らかにして今後同じようなことが無いように可能な限りの手段と資金を使って対応したんだ。」

レイナ:「そうね。テレビのCMや新聞での全面広告、果ては郵便局の配達地域指定郵便というサービスを利用して日本の全戸に注意を促していたわね。」

タツヤ:「だろう。このような企業側の素早い真摯な対応は、死亡事故を起こしたというマイナス面を補って、逆に松下電器に対して信頼感を高めたという消費者もいるくらいなんだよ。」

レイナ:「それに比べたら今回のパロマの対応は物足りなさを感じるわね。でも企業によってどうしてこんな対応の違いが生じてしまうのかしら?」

タツヤ:「うん。それはやっぱりコーポレート・ガバナンスの問題なんだよ。」

レイナ:「コーポレート・ガバナンス?それってどういうことですか?」

タツヤ:「うん。コーポレート・ガバナンスっていうのは『企業統治』とも呼ばれるんだけど、企業の意思決定の主体やその仕組みのことを言うんだ。」

レイナ:「企業を統治する人々や統治する仕組みのことですね。」

タツヤ:「そう。法律なんかでは株主が企業の所有者と定められているから、統治の主役は株主っていうことになるけど、実際のところ企業の運営は経営者に任されているから、その経営者による企業運営をどう監査・統治するかがコーポレート・ガバナンスでは重要な問題になってくるんだ。」

レイナ:「でもパロマのように非上場で同族企業の場合なんかは企業の運営のあり方を監査することは難しいんじゃないかしら。」

タツヤ:「そうだね。加えて日本の企業の場合は経営者と親密な関係にある者が監査役を担当することが多いから、企業経営を正常に監査・統治することは非常に難しい状況にあるんだ。」

レイナ:「そのような場合はどうすればいいんですか?」

タツヤ:「一つの解決策とすると社外から取締役を迎えるケースもあるんだ。」

レイナ:「新聞でもたまに目にするけど、社外取締役を受け入れるってケースも増えてきていますね。でも、多くのパターンはその社外取締役が経営者の友人であったり、経営情報を十分に公開していなかったりと有効に機能しているとは言い難い状況じゃないんですか。」

タツヤ:「確かにそんな問題もあるよね。加えてある特定の経営者が長く実権を握り続けると、経営の私物化が起こって、コーポレート・ガバナンスは外部の者にとってよりわかりにくい状況になって不祥事を未然に防ぐということがさらに難しくなるということも深刻な問題なんだよ。」

レイナ:「今回の件も今タツヤ先輩が言ったようなことが背景にありそうね。」

タツヤ:「日本では特に長期間にわたって経営の実権を握る経営者が多くて、そのような経営者の中には企業の本来の所有者である株主やそこで働く従業員、商品やサービスの提供を受ける顧客などの利益を無視して自分自身の利益を追求するモラルハザードが発生してしまうんだ。」

レイナ:「それじゃあ、どうすれば株主側から健全なコーポレート・ガバナンスを維持させることができるんですか?」

タツヤ:「うん。実際のところ、経営者=株主という場合は難しいけど、そうでなければ何点かの対策はあるんだ。」

レイナ:「一体どんな対策なんですか?」

タツヤ:「まずは株主総会の際に企業運営にふさわしい経営者を選出し、経営にふさわしくないと判断すれば解任請求を行うこと。次に社外取締役を選任して執行役員を監視させること。そして最後は選出した経営者が株主の意向に沿って経営しているかを常に監視して、もし株主の利益を損なうような経営が発覚した場合はすぐに株主代表訴訟を起こす姿勢を示すことなんだ。」

レイナ:「株主にとっては企業運営にふさわしい経営者を選出して、その後も常に監視の目を光らせていくことが重要なんですね。それから、顧客の側からも企業の対応に非があれば、マスメディアなどを通して訴えていくというプレッシャーを企業側に与えることも効果があるかもしれませんね。」

タツヤ:「そうだね。以前東芝で担当者が一顧客に対して不適切な対応を行った時にインターネットを利用してその顧客が東芝から謝罪を勝ち取ったこともあったよね。特にWeb2.0と呼ばれる現代では消費者のメディアパワーも馬鹿にできないから、企業側にとってはコーポレート・ガンバナスを維持する上でいいプレッシャーになると思うよ。」

レイナ:「そうですね。ところで経営者側からは健全なコーポレート・ガバナンスを実施するポイントというのはあるんですか?」

タツヤ:「うん。経営者側から健全なコーポレート・ガバナンスを実施するには、まずは経営情報を隠すことなく開示することが最も重要なポイントとなるんだ。それから独立した監査機関を設置したり、従業員を含めた企業をとりまく利害関係者と協調して進めることもポイントとなると思うよ。」

レイナ:「企業の不祥事は隠せば隠すほど、それが発覚した時に世間の信頼を失うことになるものね。それよりも企業にとって不利益な情報でも素早く開示して、それに対する対策を一生懸命実行している姿勢を世の中に示すことが重要になってくるということですね。」 



【MBA講座:今回のTake Away】
 

◆コーポレート・ガバナンスとは?
→企業経営の際の意思決定の主体およびその仕組み

◆日本企業におけるコーポレート・ガバナンスの問題点
1.経営者と監査役が親密な関係にある。
2.社外取締役に対する情報開示が不十分。
3.経営者が長期に実権を握り、外部からは意思決定方法がわかりにくい。

◆株主によるコーポレートガバナンスのチェック方法
1.企業運営にふさわしい経営者を選出する。
2.社外取締役に経営の健全性を監視させる。
3.自ら経営状態をチェックし、不当な行為は訴訟を起こす。

◆健全なコーポレート・ガバナンスのポイント
1.十分な経営情報を開示する。
2.独立した監査機関を設置する。
3.企業を取り巻くステークホルダーとの協調を推進する。

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2006年07月13日
 ■ 勝つ確率を高める交渉術とは?:限界値、BATNA、ZOPA

レイナ:「はぁ~。」

タツヤ:「どうした、レイナちゃん、深いため息なんかついて。」

レイナ:「えぇ、以前購入したブランド品を定期的に買い取ってもらってるんですけど、いつも鑑定人の言いなりの低い値段で妥協してるからなんだかブランド品を買うのがばかばかしくなっちゃって・・・」

タツヤ:「レイナちゃんは意外と交渉下手なんだね。やっぱり、少しでも高く買い取ってもらうためには、交渉戦略をきっちり立てとかないと自分の思い通りの結果は得られないよ。」

レイナ:「交渉戦略って、そんなブランド品の買取の時にも使えるんですか?」

タツヤ:「もちろん。人と交渉するってことは政治での外交であろうが、仕事であろうが、ブランド品の買取であろうが同じことだからね。」

レイナ:「それじゃあ、どうすればもっと高くブランド品を買い取ってもらうことができるのかしら?」

タツヤ:「そうだね。それにはまず交渉の構造を理解する必要があるんだ。」

レイナ:「交渉の構造?」

タツヤ:「そう。交渉の構造を理解するためには限界値、BATNA、ZOPAを知らないと。」

レイナ:「限界値、バトナ、ゾーパってなんですか?」

タツヤ:「うん。限界値って言うのはたとえばレイナちゃんがこれ以上安くブランド品を売りたくないという価格だし、逆に買い取る方にとってはこれ以上高い価格では引き取りたくないという価格なんだ。」

レイナ:「お店に持ち込んだときに大体これくらいの価格を提示してもらえればいいなという希望価格はあるけど、鑑定がそれと大幅に乖離していたとしても妥協してしまうのがいけないのね。交渉の際ははっきりとこれ以下では受け入れられないという限界値を定めて望まなきゃいけないのか。」

タツヤ:「次にBATNAだけど、これはBest Alternative to Negotiated Agreementの頭文字を取ったもので交渉相手から提示された条件以外で最高の代替案のことなんだ。」

レイナ:「たとえば、私の場合はどうなのかしら?」

タツヤ:「そうだね。レイナちゃんの場合はブランド品の買取を依頼する時にどのくらいのお店を回っているの?」

レイナ:「いつも一店舗だけですけど。」

タツヤ:「そうするとBATNAはありえないよね。やっぱり二店舗以上お店を回って大体の買取相場を知っておかなくちゃ。そのような交渉の妥結点を類推する情報は交渉においては参照値と呼ばれているんだ。」

レイナ:「このような交渉の時には、二店舗以上回って鑑定してもらわなきゃいけないのね。そうすることによってもし一店舗での評価が低かった場合は、交渉の時に高く評価してくれた別のお店の評価をBATNAとして強気の交渉に望めるってことになるのね。」

タツヤ:「そうだね。交渉というのはやっぱりお互い自分に有利な結果をもたらしたいと思うのは当然だから、BATNAがあれば強気の交渉も可能になるよね。通常はこのBATNAが交渉の限界値になるんだ。」

レイナ:「そうね。たとえば、ある店舗で20万円という買取価格が提示されていれば、別の店舗で10万円という買取価格が提示された時に20万円を限界値としてそれから更に上乗せできなければ交渉を続ける意味がないものね。」

タツヤ:「その事例で言えば、レイナちゃんが20万円以上でなければブランド品を売らないという妥結範囲を持っているように、業者の方も最初は10万円という価格を提示したけどたとえば30万円を限界値としてそれ以下でしか買取をしないという妥結範囲を持っているんだ。交渉ではこの2人の妥結範囲の組み合わせ、つまり20万円以上30万円以下の範囲の中で最終価格が決定されることになるんだ。このような交渉妥結範囲がZone of Possible Agreement、ZOPAって呼ばれるんだよ。」

レイナ:「やっぱり最初は少しでもふっかけて自分にいい条件で交渉成立を目指しますよね。だから、最初に提示された条件をそのまま鵜呑みにするんじゃなくて話し合いの中で先方の限界値を探っていくってことも重要なのね。それでZOPAがあれば、できる限り自分に有利な条件での妥結を目指すってことか。」

タツヤ:「そう。これまでのレイナちゃんの交渉では、自分の限界値も無かったし、相手の限界値を推測すること無しにそのまま相手の言い値に甘んじていたけど、今回の説明で交渉の構造を理解することができただろう。交渉ではこのように構造を理解した上で、はっきりとした目標値を定めて、相手の限界値に近い条件を引き出すことが重要なんだよ。それにはBATNAを持つなど強気の交渉に望める体制を整えておく必要もあるってことさ。」


【MBA講座:今回のTake Away】
 
◆交渉を優位に進めるためには?
→限界値、BATNA、ZOPAを把握し、交渉を構造的に捉える必要がある。

◆限界値とは?
→その条件を下回る場合には交渉が決裂する値。たとえば、価格交渉においては買い手にとってはそれ以上高ければ買わない価格であり、売り手にとってはそれ以上安ければ売らない価格。

◆BATNAとは?
→Best Alternative to Negotiated Agreementの頭文字を取ったもの。交渉において相手から提示された条件以外で最高の代替案。BATNAがある場合はBATNAが限界値となる。

◆ZOPAとは?
→Zone of Possible Agreementの頭文字を取ったもの。自分の妥結範囲と相手の妥結範囲の交わる部分。交渉ではZOPAの範囲で最終的な条件が決定されることになる。

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2006年07月06日
 ■ ゲーム理論における『男女の争い』とは?

レイナ:「タツヤ先輩、さっき新規事業に関する会議が終わったんですけど田中課長は携帯事業に参入すべきって主張してるし、一方で鈴木課長はオンライン金融事業に参入すべきって譲らなかったんだって。」

タツヤ:「まるでゲーム理論における『男女の争い』みたいだね。」

レイナ:「ゲーム理論の『男女の争い』って?」

タツヤ:「うん。ゲーム理論の『男女の争い』っていうのは最終的には協調して一致する行動をとることにはお互い同意しているんだけど、協調の方法については異なる選択を主張するゲームのことなんだ。」

レイナ:「ということは田中課長も鈴木課長も意見は異なるけどもし一方に決まれば協調してプロジェクトを成功に導く努力を行うってことですね。」

タツヤ:「そう。ここで面白いのはこの『男女の争い』には関係者が納得する結論、ゲーム理論では『均衡点』と呼ばれるんだけど、それが2つあるっていうことなんだ。」

レイナ:「納得する結論が2つあるってどういうことですか?」

タツヤ:「以前、ゲーム理論で『囚人のジレンマ』について学んだ時は必ずどの選択肢よりも良い結果が得られる『支配戦略』というものがあったよね。」

レイナ:「そうね。確か『囚人のジレンマ』の時は第3のビールを値上げするかどうかで値上げせずに価格を据え置くというのがどの選択肢よりも効果が高く『支配戦略』になるってことでしたよね。」

タツヤ:「ただ、この『男女の争い』はそのような支配戦略が無くて、一旦両者にとってベストな選択でなくても、その選択を変更しにくいという状況に陥るんだ。」

レイナ:「たとえば?」

タツヤ:「たとえば、レイナちゃんと彼氏が今度のデートでどこに行くか相談したとしようか。アミューズメントパークの好きなレイナちゃんはディズニーランドに行きたいって彼氏におねだりしたけど、彼としてはウィンドサーフィンをしに海に行きたいと思っている。このようなお互いの意見が食い違う状況でも、一旦一方に決まれば一人が決定を翻して一人で自分の行きたい所へ行くことはありえないよね。」

レイナ:「もちろんよ。二人でいるから何でも楽しいわけで、ウィンドサーフィンに決まれば、たとえウィンドサーフィンが第一希望でなくても私は彼と一緒にいるだけで満足よ。それからディズニーランドに決まれば彼もディズニーランドが第一希望でなくても満足すると思うわ。」

タツヤ:「だろう。だから、この『男女の争い』ではディズニーランドとウィンドサーフィンという2つの均衡点があって、一旦どちらかに決まれば相手が共に意見を変えない限り、自分一人が自分の意見を通すと言うインセンティブが働かなくなるのが特徴なんだ。このような関係者が納得する結論はゲーム理論では『ナッシュ均衡』と呼ばれているんだよ。」

レイナ:「ナッシュ均衡ですか?確かに一旦決まれば仮に自分のベストチョイスでなくても、二人のベストチョイスであれば変更する理由はないですからね。」

タツヤ:「この『男女の争い』が面白いのは二人にとってベストチョイスでなくてもナッシュ均衡になるっていうことなんだ。」

レイナ:「二人にとってベストな選択でなくても、一旦決定すれば、他の選択に変更するインセンティブが働かないってことですか?」

タツヤ:「そう。たとえば、次のデートでディズニーランドやウィンドサーフィン以外に『近くの公園でのんびり過ごす』という選択肢が増えたとしよう。この選択肢はお互いの第一希望だったディズニーランドやウィンドサーフィンに比べればお互い満足度は低いんだけど一旦決定すれば、敢えてディズニーランドやウィンドサーフィンに変更しようというインセンティブが働かず、より低いレベルでのナッシュ均衡になってしまうんだ。」

レイナ:「やっぱり、二人で協調して行動するってことが前提だからこのような低いナッシュ均衡に落ち着くっていう場合もあるんですね。」

タツヤ:「このような事例を踏まえると今回の田中課長と鈴木課長の意見の相違もゲーム理論でいうところの『男女の争い』って言ったことが納得できるだろう。」

レイナ:「そうね。この男女の争いではタツヤ先輩がさっき言ったように低いレベルでのナッシュ均衡という可能性もあるから、新規事業を行わないという選択が出てきて低いレベルで均衡して欲しくないものですね。」


【MBA講座:今回のTake Away】
 
◆ゲーム理論『男女の争い』とは?
最終的には協調して一致する行動をとることにはお互い同意しているが、協調の方法については異なる選択を主張するゲームのこと。

◆ゲーム理論『男女の争い』の特徴
複数のナッシュ均衡の可能性があり、一旦ナッシュ均衡に落ち着くとそれがたとえ低いレベルでも一方が選択を変更するインセンティブが働かない。

◆ナッシュ均衡とは?
ゲーム関係者全てが納得する結論。ナッシュ均衡の下ではどのプレーヤーも選択の変更のインセンティブを持たない。

◆ゲーム理論『男女の争い』の事例
恋人同士がデートスポット(ディズニーランドorウィンドサーフィン)を決定する際の争い
 
◎二人でディズニーランドに行く場合の満足度
彼氏 90% 彼女 100% (→ナッシュ均衡)
 
◎二人でウィンドサーフィンに行く場合の満足度
彼氏 100% 彼女 90% (→ナッシュ均衡)

◎彼氏がウィンドサーフィン、彼女がディズニーランドに行く場合の満足度
彼氏 0% 彼女 0%

◎彼氏がディズニーランド、彼女がウィンドサーフィンにいく場合の満足度
彼氏 0% 彼女 0%

この場合のナッシュ均衡は二人でディズニーランド、二人でウィンドサーフィンと言う選択であり、どちらに決定しようが、一方が選択を変更するインセンティブは働かない。(一人だけが選択を変更すると一気に二人の満足度が0%となってしまうため。)

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