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2006年08月31日
 ■ 新規参入で成功しやすい業界を見分けるファイブフォース分析とは?

レイナ:「タツヤ先輩、今の時代ってパソコンなしでは生きていけないような時代になったじゃないですか。だからうちの会社も子会社を通じてパソコンの製造業に参入するっていう話が出ているらしいですね。」

タツヤ:「そうだね。パソコンのマーケットっていうのは巨大だから、うまくいけば業績に与えるインパクトは大きいかもね。でも僕の意見とするとやめておいた方がいいと思うな。」

レイナ:「どうしてですか?パソコン製造業の後発でも2004年に東証マザーズに上場したMCJという好事例もあるじゃないですか。」

タツヤ:「うん。確かにMCJのようにうまく事業を軌道に乗せた企業もあることはあるけど、競争構造を5つの要因から分析するとあまり新規参入には好ましくない業界だってことがわかるんだ。」

レイナ:「競争構造を5つの要因から分析するって?」

タツヤ:「ああ、この競争構造を5つの観点から分析する手法はファイブフォース分析と言って、ハーバードビジネススクールのポーター教授の提唱する理論なんだ。」

レイナ:「ポーター教授と言えば、『差別化』、『コストリーダーシップ』、『集中』の競争を優位に進める3つの基本戦略でも有名ですよね。」

タツヤ:「レイナちゃん、よく知っているね。そのポーター教授の理論では、業界の競争や収益の構造を把握するには5つの観点から分析する必要があるということなんだよ。」

レイナ:「その5つの要因って言うのは実際にどんなものなんですか?」

タツヤ:「うん。『買い手の力』、『売り手の力』、『代替品の脅威』、『新規参入業者の脅威』、『業界内競合の程度』の5つになるんだよ。」

レイナ:「そうすると、その5つの観点から業界を分析することにより、その業界の特色が浮き彫りにされるってことね。」

タツヤ:「そう。たとえば、『買い手の力』の観点からは買い手、つまり顧客や取引先と自社の力関係を見ていくんだ。そこで問題なんだけど、パソコン製造業にとって主な顧客は誰になるだろう?」

レイナ:「そうね。今ではインターネットでダイレクトに販売することもあるけどやっぱり家電量販店などが主な買い手になるんじゃないかしら。」

タツヤ:「そうだね。そうするとパソコン製造業者と家電量販店では力関係はどのようになってるかな?」

レイナ:「やっぱり大量に仕入れて、大量に販売する家電量販店の方が力が強いんじゃないかしら。仕入機種や仕入価格などにも大きな影響を及ぼしていると思うわ。」

タツヤ:「そうすると、レイナちゃんの言う通りにパソコン製造業では『買い手の力』が大きいと結論付けることができるよね。それじゃあ、次の『売り手の力』はどうだろう?パソコン製造業にとっては売り手とはパソコンの製造に必要な原材料を販売してくれる企業なんだけど。」

レイナ:「パソコンの原材料と言えば、CPUや液晶、OSなんかが必要ですね。と言うことはインテルやシャープ、マイクロソフトなどが売り手の主なプレーヤーとなるわけですか。このような原材料の価格の決定権はいくらパソコンを大量生産するといっても、売り手の方に分がありそうね。」

タツヤ:「そうだね。CPUや液晶、OSなどは供給する企業も限られていて自由競争で価格が決まっているわけではないからね。この売り手との力関係でも、やはりパソコン製造業は不利な立場にあるっていうことだ。」

レイナ:「こうして考えてみるとパソコン製造業者っていうのは仕入業者から仕入価格の主導権を、納入業者からは卸売価格の主導権を握られて、利益を生み出す売上とコストをコントロールする幅が極端に狭められているっていうことになりますね。」

タツヤ:「そう。他の観点から見てもパソコン製造業は非常に厳しい競争・収益構造になっているんだけど、残りの3つの要因については次回見ていくことにしようか。」

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2006年08月17日
 ■ セグメンテーションの4つのパラメーターとは?

レイナ:「タツヤ先輩、前回はヒット商品を生むためには市場を細分化してターゲット顧客を明確にしていく必要があるってことでしたけど、市場の細分化って実際にどうすればいいんですか?」

タツヤ:「レイナちゃん、実際のところ市場の細分化、すなわちセグメンテーションには普遍的な基準や方法はないんだ。なぜなら製品や経営資源、競合他社の戦略、その他の市場環境は時間とともに変化して一定ではないからね。」

レイナ:「それじゃあ、どのようにしてセグメンテーション戦略を遂行すればいいんですか?」

タツヤ:「そうだね。セグメンテーションを実行する際には一般的に4つのパラメータ(変数)が使用されるんだ。」

レイナ:「4つのパラメーター?」

タツヤ:「そう。まず第一に『地理的変数』。この『地理的変数』はセグメンテーションをする上で最も基本的で使用頻度の高いパラメーターなんだ。このパラメーターには居住地域や気候、都市化の進展度、政府の規制、顧客の行動範囲などが含まれるんだ。」

レイナ:「ということは『地理的変数』による市場の細分化では、市場を北海道、東北、関東などの地域から細分化できるってことですか?」

タツヤ:「そうだね。『地理的変数』では他にも都市部や郊外など人口密度から細分化したり、温暖地や寒冷地などの気候から細分化できるんだ。じゃあ、次のパラメータを紹介しよう。次のパラメーターは『人口動態変数』と呼ばれるものなんだ。」

レイナ:「人口動態変数?」

タツヤ:「うん。『人口動態変数』っていうのは市場を年齢や性別、世帯規模、所得レベル、職業、教育レベルや人種などの特徴から市場を細分化していくんだ。このパラメーターは特に消費財のマーケティングで重要視されてきたんだよ。」

レイナ:「そうすると、たとえば、ある化粧品メーカーが25歳から30歳までの年収500万円程度の収入のある大卒独身女性というような基準で市場を細分化することはこの『人口動態変数』によるものなんですね。」

タツヤ:「そうだね。そのように細かく対象を絞り込んでいけば、対象となる層がどのような商品に対する嗜好があるか明らかになってくるだろう。」

レイナ:「そうね。一人ひとりは違ってても同じ顧客層では大まかな傾向っていうのがあるものね。」

タツヤ:「次の変数は『心理的変数』もしくは『サイコグラフィック変数』と呼ばれ、市場を消費者のライフスタイルや性格から細分化するものなんだ。」

レイナ:「消費者のライフスタイルや性格から市場を分類するってなんだか難しそうですね。」

タツヤ:「たとえば、不動産業者がマンションや家を販売する時、購入者のライフスタイルを基準にして和室を作るのかどうか決定することができるよね。」

レイナ:「そうか。アンケートを取って和室は無い方がいいと言う意見が多数を占めれば、全て洋室のマンションを建設して販売するということもあり得るわね。今は結構ライフスタイルも多様化してるからそういったライフスタイルからの市場細分化はこの『心理的変数』に含まれるんですね。」

タツヤ:「そういうこと。そして、最後のパラメーターは『行動変数』と呼ばれて、顧客の過去の購買状況や使用頻度などから市場を細分化していくんだ。」

レイナ:「ということは自社の顧客データを分析して高いものを買うお客や安いものを買うお客に分類したり、毎月買うお客や1年に1回買うお客などに分類することですね。」

タツヤ:「そうだね。セグメンテーションはこのように4つのパラメーターを基準にして自社に合わせていろいろな変数を組み合わせて実施するのが効果的なんだ。」



【MBA講座:今回のTake Away】
 

◆セグメンテーション実行時の4つのパラメーター
1.地理的変数
2.人口動態変数
3.心理的変数
4.行動変数

◆地理的変数
→居住地域や気候、都市化の進展度、政府の規制、顧客の行動範囲
(例)市場を北海道、東北、関東などの地域から細分化する。

◆人口動態変数
→年齢や性別、世帯規模、所得レベル、職業、教育レベルや人種
(例)25歳から30歳までの年収500万円程度の収入のある大卒独身女性というような基準で市場を細分化する。

◆心理的変数
→消費者のライフスタイルや性格
(例)和室を必要だと感じる人と感じない人という基準で市場を細分化する。

◆行動変数
→顧客の過去の購買状況や使用頻度
(例)高いものを買うお客や安いものを買うお客に分類したり、毎月買うお客や1年に1回買うお客などに分類する。

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2006年08月10日
 ■ ヒット商品の基本、セグメンテーションとは?

レイナ:「タツヤ先輩、今期うちの会社が自信をもって市場に投入した携帯音楽プレーヤー。あれほどいろんな機能を搭載して、多くの消費者を獲得できると張り切っていたのに、結局は空振りに終わったみたいね。」

タツヤ:「やっぱり、セグメンテーションをしっかり行わなきゃ商品をヒットさせるのは難しいってことだね。」

レイナ:「セグメンテーション?一体そのセグメンテーションってどんなものなんですか?」

タツヤ:「うん、セグメンテーションっていうのはいろいろな基準で市場を細分化していくことなんだ。」

レイナ:「市場を細分化していく・・・でもなぜ市場を細分化していく必要があるんでしょうか?」

タツヤ:「まず市場を細分化することによってターゲット顧客が明確になるんだ。たとえば日本国民全体を対象とするマーケティングなんて不可能に近いだろう。それと企業の経営資源は限りがあるから市場を細分化することによって効率よく経営資源を活用することも可能ってことさ。」

レイナ:「そうすると今回の失敗は市場を細分化することなしにやたらいろんな機能を付加した商品を市場に投入したのがそもそも間違いだったってことね。」

タツヤ:「そういうことになるね。セグメンテーションっていうのは顧客のニーズやウォンツが多様化している現代社会で企業の限りある経営資源を最も有効な形で活用し、事業を展開する上で必須な戦略なんだよ。たとえば、すべての人のすべてのニーズに応える製品やサービスっていうのは製品のコンセプトが非常に不明確で製品の独自性が保てなくなるだろう。またすべてのニーズに応えるってことはいろんな機能を製品やサービスに付加しなきゃいけない。そのような製品やサービスの開発はコストが非常にかかって企業経営上好ましい戦略とは言えないんだ。」

レイナ:「よく『二兎を追うものは一兎も得ず』っていうじゃないですか。だからマーケティングもこれと同じでタイプの違った多くの人のニーズを満たそうとする戦略では結局失敗に終わる可能性が高いってことですね。」

タツヤ:「そうだね。やっぱり的を絞らなきゃ誰も“自分のため商品”って思ってくれないだろう。じゃあ次はそのセグメンテーションを行う際に重要になる4つのポイントを見ていこうか。」

レイナ:「市場を細分化する時の重要ポイントですか?」

タツヤ:「そう。成功するセグメンテーションはいくつかのポイントを踏まえなきゃいけないんだ。その第一点目は『測定可能性』。実際に細分化される市場の規模と購買力が容易に測定できなければいけないってことなんだ。」

レイナ:「そうね。市場規模がわからなければ企業としてもどのくらいの売上をその市場から上げられるかわからないから規模を測定できるっていうのは大切なことだと思うわ。」

タツヤ:「次のポイントは『到達可能性』と呼ばれ、細分化された市場に対してマーケティング活動が効果的に行えなければならないんだ。」

レイナ:「ターゲットが特定されてもプロモーション活動を通して企業のメッセージが伝えられなければ商品が売れることはないってことですね。」

タツヤ:「三点目は『維持可能性』と呼ばれ、細分化された市場が企業経営を存続できるだけの十分な利益を確保できる規模でなければならないんだ。」

レイナ:「市場規模が十分な利益を確保できるくらいじゃなければ、市場に参入する意味がないですからね。」

タツヤ:「そう。そして最後は『実行可能性』と呼ばれ、細分化された市場で顧客を引き付ける効果的なプログラムが実行できるかどうかが重要なんだ。」

レイナ:「ふーん、このような4つのポイントからセグメンテーションは行われるんですね。」



【MBA講座:今回のTake Away】
 

◆セグメンテーションとは?
→市場をある基準によって細分化していくこと。

◆なぜセグメンテーションが必要なのか?
1.ターゲット顧客が明確になる。
2.効率よく経営資源を活用することが可能になる。

◆セグメンテーションのポイント
1.測定可能性
2.到達可能性
3.維持可能性
4.実行可能性

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2006年08月03日
 ■ 果たして敵対的買収(TOB)は成功するのか?

レイナ:「タツヤ先輩、新聞では王子製紙が北越製紙の敵対的買収を行うって話題になっていますね。」

タツヤ:「そうだね。王子製紙は製紙業界を再編するという目的で高級紙に強く、利益率の高い北越製紙を傘下に収めたいという思惑で北越製紙株のTOBを実施すると発表したよね。」

レイナ:「ところでそのTOBって何なんですか?」

タツヤ:「うん。TOBっていうのはTake Over Bidの略で株式を公開に買い付けることを言うんだ。上場企業などでは市場外で5%以上の株式を買い付ける場合には原則TOBを実施する必要があるんだよ。TOBでは買い付け目的や期間、買い付け価格を新聞公告などで公表して売主を求めるんだ。」

レイナ:「今回は相手企業の承諾なしにそのTOBを実施するから敵対的な買収になるわけね。」

タツヤ:「そうだね。王子製紙が提示したTOB価格も先月の650円程度から20%以上も高い800円という価格を提示しているからそれなりの勝算はあるかもしれないね。」

レイナ:「でも今回の敵対的買収には三菱商事も絡んでいるのよね。」

タツヤ:「うん。北越製紙は三菱商事に対して新潟工場の増設設備資金として300億円の第三者割当増資を行うことを発表しているんだ。」

レイナ:「第三者割当増資?」

タツヤ:「そう。株式で資金を調達する場合には一般の投資家から資金を調達する公募増資と特定の第三者から資金を調達する第三者割当増資があるんだ。」

レイナ:「今回は後者のパターンになるわけね。でもどうして第三者割当増資なんですか?」

タツヤ:「第三者割当増資は会社の経営が悪化して株価が下落し公募増資が難しい場合や資本提携先と関係を強化する場合があるんだけど、今回の北越製紙の場合は原材料の仕入れや製品の販売などで三菱商事との関係を強化するために行うものなんだ。」

レイナ:「ということは今回は三菱商事が敵対的買収に対するホワイトナイトってことなのかしら?」

タツヤ:「実際のところはそうでもないんだ。北越製紙と三菱商事の提携の話は敵対的買収の前からあるからね。ただ、この第三者割当増資は問題点があって、三菱商事に607円で5千万株を割り当てることによって実に30%も発行済み株式数が増えるんだけどダイリューションが起こってしまう可能性が高いんだ。」

レイナ:「ダイリューション?」

タツヤ:「そう。ダイリューションっていうのは株式の価値が希薄化していくことなんだ。株主にとって一株当たりの利益は非常に重要な指標だけど一気に株式数が増えることによって一株当たりの利益は極端に低下していくんだ。」

レイナ:「要は今回の第三者割当増資で北越製紙の株式の価値が下がっていく可能性が高いってことね。」

タツヤ:「今回調達した資金で急激に利益水準を向上させればいいけどなかなかそういうわけにはいかないからね。」

レイナ:「そうすると、北越製紙の既存株主は王子製紙のTOBに応じた方が得策ということも考えられるわね。」

タツヤ:「そうだね。上場企業が株主の場合、株主にメリットのあるTOBに応じなかったら株主代表訴訟で訴えられるということも考えられるしね。」

レイナ:「王子製紙、北越製紙、三菱商事の三社もそうだけど、大株主も難しい判断を迫られるってことか。」

タツヤ:「これまで日本では敵対的買収の成功した事例はほとんどないけど、今回は状況からいって少なからず成功の可能性があるわけだから今後の動向が注目されるね。」



【MBA講座:今回のTake Away】
 

◆TOBとは?
→株式公開買付のこと。証券取引所の上場企業や、未上場でも一定の条件を満たす企業の株を市場外で5%以上買う場合、原則、TOBによって買い付けなければいけない。また、市場外で株式買取後の議決権が全体の3分の1以上になる場合には、TOBが強制的に適用される。

◆第三者割当増資とは?
→特定の第三者に株式を割り当てて資金を調達する方法。会社の経営が悪化して株価が下落し公募増資が難しい場合や資本提携先と関係を強化する場合に利用される。既存の株主に対する利益を損なう可能性があるので、発行条件を含めて株主総会で特別決議を経る必要がある。

◆ダイリューションとは?
→株式の価値の希薄化が発生すること。新株の発行により一株当たりの当期利益などが低下してしまう現象。

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