« バリューチェーン分析とは? | メイン | 株式投資判断指標その1:PERとPBR »
2006年09月21日
タツヤ:「レイナちゃん、前回はバリューチェーンの概要について説明したけど憶えているかな?」
レイナ:「ええ、バリューチェーンっていうのは企業の内部環境を分析するツールで、企業が製品の付加価値を高めていく過程を『購買物流』、『製造』、『出荷物流』、『販売・マーケティング』、『サービス』という主活動と『全般管理』、『人事・労務管理』、『技術開発』、『調達活動』という支援活動に分類して自社の強みや弱みを細かく把握していく方法でしたよね。」
タツヤ:「そうだね。今回はそのバリューチェーンが実際にビジネスでどのように役立つか事例を見ていくことにしよう。」
レイナ:「前回の説明でバリューチェーンの枠組みはわかりましたけど、理論を身につけた上で実戦でどのように役立てるかの方が重要ですからね。」
タツヤ:「それじゃあ、まずはバリューチェーンを使って“活動を省く”ことにより、顧客に対する価値を向上させることを考えていこうか。」
レイナ:「“活動を省く”ですか?」
タツヤ:「そう。バリューチェーンの中で活動を省くことによってコストを削減できる余地がないか分析し、改善することによって価値を高めることができる場合があるんだ。」
レイナ:「たとえば?」
タツヤ:「たとえば、パソコンメーカーであれば『販売・マーケティング』プロセスでこれまで問屋を通して商品を流通させるバリューチェーンが構築されていたんだ。そのようなプロセスは確かに広く販売店に商品を置いてもらうには有効かもしれないけど、在庫を抱えるリスクも高く、結果的にはそのリスク分のコストを消費者に転嫁して高価格の原因にもなるんだ。ところが、この問屋というプロセスを省いて、オンラインで直接消費者から注文を受けてから製造し、販売すれば在庫を持つ必要もなく、その分価格も安くできて、更に消費者に価値を提供することができるようになるだろう。」
レイナ:「テレビや新聞、インターネットを通じてお客さんに商品を直接販売する、いわゆる“デル・モデル”って呼ばれる方法ですね。」
タツヤ:「そう。これらの店舗や営業員を省いてコストを削減し、低価格でマーケットシェアを獲得したのは、何もコンピューターメーカーのデルだけでなく、生保業界でもアフラックやアリコなどが同じように“活動を省く”ことによって急成長を遂げているんだ。」
レイナ:「そういえば、テレビでも日本生命や第一生命と違って、アフラックやアリコのCMは“お申し込みは今すぐ!”なんて言ってフリーダイヤルの番号を連呼していますよね。」
タツヤ:「そうだろう。そして“活動を省く”とは逆に“活動を加える”ことによっても価値を高めることができるんだ。」
レイナ:「今度は“活動を加える”ですね。」
タツヤ:「ああ、たとえば、さっきの事例では問屋や販売店という流通網を省くことにより、コストを削減させるということだったけど、これにオンライン販売という新たな流通手段を“加える”ことによって初めて顧客の利便性を向上させることができるだろう。」
レイナ:「そうですね。販売店を省くだけでは、顧客が商品を手にできる選択肢が少なくなるだけで、価値は向上していかないけど、オンラインショップという新たな流通手段を加えるだけで、24時間好きな時に注文ができて、お店に足を運ぶことなく商品を手にすることができますよね。」
タツヤ:「また、オンラインショップでいえば、検索という機能を加えるだけで、商品を探す手間を省くことができて、その分顧客の利便性も向上していくことになるね。」
レイナ:「そういえば、実際の店舗で商品を探す手間っていうのもありますし、お店に行って目当てのものが置いていないということもありますからね。」
タツヤ:「このように新たな活動を加えることでも顧客に対する価値を向上させることができるんだ。また、その他にもバリューチェーンを使って“活動を束ねる”っていうのもあるんだ。」
レイナ:「活動を束ねる?」
タツヤ:「そう。たとえば、かつて銀行は預金や融資などが主なサービスだったけど、最近では証券会社が行っていた投資信託を販売したり、保険会社が行っていた終身保険を販売したり、様々なサービスを“束ねる”ことによって顧客の利便性を増し、サービスの価値を向上させているんだよ。」
レイナ:「そういえば、今では銀行に寄ればワンストップで様々な金融サービスが受けられますよね。このように“活動を束ねる”ことも顧客にとっての価値を高めるためには有効なことなんですね。」
タツヤ:「そういうこと。それじゃあ、最後のバリューチェーンの活用法で“活動を選択する”について説明しようか。」
レイナ:「最後は活動を選択することなんですか?」
タツヤ:「ああ、活動を選択するってことはバリューチェーンのそれぞれのプロセス、たとえば、購買物流でも製造でも出荷物流でも、どんなプロセスでもいいんだけど、自社で行う場合と外注した場合のコストを比較して、自社で行う方がコストが高ければ、外注を選択してコストを削減し、最終的に価値を高めることもできるんだ。」
レイナ:「たとえば、原材料を運搬するにはトラックなどが必要になりますけど自社でトラックを購入して運搬する方法と運送会社に外注して運搬する方法を比較してコストの安い方を選択すればいいってことになりますね。」
タツヤ:「そう。他にも製造のプロセスで工場を建設して製品を製造する場合と外注して製造する場合を比較して外注の方がコストが低ければ全てを外注して製造するって選択もありだよね。このような企業はファブレスカンパニーって呼ばれているんだけど、ナイキなんかは自社で製造工場を持たずに全て外注に出しているんだよ。」
レイナ:「ふーん。こうしてみるとバリューチェーン分析を通していろいろな方法で価値を高めていくことが可能なんですね。」
【MBA講座:今回のTake Away】
◆バリューチェーンとは?
→企業が製品の付加価値を高めていく過程を『購買物流』、『製造』、『出荷物流』、『販売・マーケティング』、『サービス』という主活動と『全般管理』、『人事・労務管理』、『技術開発』、『調達活動』という支援活動に分類して自社の強みや弱みを細かく把握していくためのツール。
◆バリューチェーンにより“行動を省く”
→バリューチェーン分析により企業活動の無駄を省くことで顧客に対する価値を向上させることができる。たとえば、コンピューターメーカのデルは販売店というプロセスを省いて在庫などにかかるコストを削減し、低価格を実現できた。
◆バリューチェーンにより“行動を加える”
→省くとは逆に加えることでも価値の向上を図ることができる。オンライン販売という顧客に対する販売チャネルを加えることで24時間好きな時に商品を購入できるという利便性が増し、顧客に対する価値は向上する。
◆バリューチェーンにより“行動を束ねる”
→自社の取り扱うサービスを束ねていくことにより価値を向上させることができる。銀行では従来の預金、融資に加え、投資信託や終身保険の販売を束ねていくことでワンストップで金融商品が購入できるという顧客にとっての利便性を高めることが可能となった。
◆バリューチェーンにより“行動を選択”
→バリューチェーンのプロセス一つひとつと外注のコストとを比較することにより価値を高めることができる。ナイキなどは製造過程で全てを外注に出しており、経営資源をマーケティングに集中させ価値を高めている。
投稿者 MBA : 2006年09月21日 11:53
