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2006年12月28日
 ■ 企業の経営状況を計測するコーポレートメトリックスとは?(前編)

レイナ:「タツヤ先輩、取引先のXYZ商事なんだけど、業績がかなり悪化したらしいですね。今営業部ではその話題で持ちきりよ。」


タツヤ:「そうか。XYZ商事の社長はどんぶり勘定だからね。企業っていうのはコーポレートメトリックスを利用して常に自社の経営状況を把握しておかなきゃいけないんだけどね。」


レイナ:「コーポレートメトリックス?それは一体どんなものなんですか?」


タツヤ:「うん。コーポレートメトリックスっていうのは企業の経営状況を計測する指標なんだ。収益性や流動性、回転率の面から企業の経営状況をチェックしていくんだよ。」


レイナ:「収益性や流動性、回転率の面から企業の経営状況をチェック?」


タツヤ:「そう。それじゃあ、まず収益性指標について見ていくことにしようか。収益性指標で代表的なものは『売上』なんだ。企業が存続するためには利益を上げなければいけないだろう。企業活動には原材料を仕入れて商品を作る費用もかかれば、それらを販売する各種の経営努力のための費用もかかるんだ。だから企業は利益を上げるためにそれらの費用を上回る売上を上げる必要があるんだよ。」


レイナ:「そうね。売上が上がらなければ社員の給料も払えないし、仕入れもできないから、いずれは倒産っていうことになりますよね。」


タツヤ:「そういうこと。そして、その売上の次に見ていかなきゃいけないのは売上高利益率なんだ。」


レイナ:「売上高利益率?」


タツヤ:「ああ、売上高利益率っていうのは、売上に対してどの程度効率的に利益を上げたかを測る各種の指標なんだ。企業の業績は損益計算書に記録されるんだけど、その中でもいろいろな利益の種類があるんだよ。」


レイナ:「いろいろな利益の種類って?」


タツヤ:「うん。まずは売上総利益。この売上総利益は売上から仕入れ代金などの売上原価を引いて求められるんだ。粗利益とも呼ばれているんだよ。そして売上総利益から人件費や一般管理費を引いたものが営業利益。その営業利益から利息などの金融収支や有価証券の売買損益を加減したものが経常利益。そして、最後に固定資産の売却損益などの特別損益を差し引いたものが税引前の当期利益と呼ばれるものなんだ。」

 
レイナ:「売上総利益に営業利益、経常利益に当期利益と、一言に利益といってもいろいろな種類があるのね。」


タツヤ:「そうだね。そしてこれらの利益が売上に対してどのくらいの割合を占めているかが各利益率ということになるのさ。コーポレートメトリックスでは次のような計算式で指標を測っていくことになるんだ。」


◎ 売上総利益率=(売上総利益÷売上高)×100

◎ 売上高経常利益率=(経常利益÷売上高)×100

◎ 売上高当期利益率=(当期利益÷売上高)×100


レイナ:「へぇー、これらの各売上高利益率で売上に対する効率がわかるってことなんですね。」


タツヤ:「そう。そして、これらの指標に加えてROAも重要な指標と言えるんだ。」


レイナ:「ROA?」


タツヤ:「うん。ROAっていうのは“Return on Asset”の略で、企業が持つ総資産に対する利益の比率のことなんだ。分子の利益額は通常、当期利益を用いるんだけど、営業利益や経常利益が使われる場合もあるんだ。ROAは次のような式で求められるんだよ。」
 

◎ ROA=(利益÷総資産)×100
 

レイナ:「この式から言えることは、ROAっていうのは総資産がどのくらい効率的に利益に結び付けられているかっていうのを表す指標ってことですね。」


タツヤ:「そうだね。これらの指標を時系列で比較したり、競合他社と比べたりして収益性を常にチェックしておく必要があるってことさ。」


<次回に続く・・・>


【MBA講座:今回のTake Away】


◆コーポレートメトリックスとは?
→企業の経営状況を把握するための指標。収益性や流動性、回転率などの指標
がある。


◆収益性の指標
1.売上

2.売上高総利益率
(式)売上総利益率=(売上総利益÷売上高)×100

3.売上高経常利益率
(式)売上高経常利益率=(経常利益÷売上高)×100

4.売上高当期利益率
(式)売上高当期利益率=(当期利益÷売上高)×100

5.ROA
(式)ROA=(利益÷総資産)×100

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2006年12月21日
 ■ 最新の投資指標EV/EBITDA倍率って何?

レイナ:「タツヤ先輩。最近外資系投資ファンドのTOBなど企業買収が日本でも活発化していますね。ところでこのような投資ファンドはどのようにして投資対象を選んでるんですか?」


タツヤ:「そうだね。投資ファンドが買収対象を選定する際によく利用される指標にEBITDAっていうものがあるんだ。」


レイナ:「EBITDA?初めて聞く用語ですけど一体EBITDAってどんな指標なんですか?」


タツヤ:「ああ、EBITDAっていうのは、Earnings Before Interest,Taxes,Depreciation and Amortizationの頭文字を取ったもので税前利益に支払利息と減価償却費を加えたものなんだ。」


レイナ:「でも、なぜそのEBITDAっていう指標が利用されるんですか?」


タツヤ:「通常、企業の収益性を測る基本的な指標には営業利益、経常利益、税前利益、税引後利益などがあるんだけど、それぞれの利益には特有の問題点が含まれているからなんだよ。」


レイナ:「その問題点って?」


タツヤ:「たとえば、営業利益って言うのは売上から営業にかかるコストを引いて求められる利益だけど、減価償却の計算方法によってその値が変わることがあるんだ。」


レイナ:「減価償却って言うのは実際にキャッシュの支出を伴わないコストだからキャッシュフローの観点から営業利益は問題があるってことですね。」


タツヤ:「そうだね。次の経常利益はこの営業利益に金融収支を加味して求められる利益なんだけど金利支払や有価証券売却益などの影響を受けてしまうんだ。」


レイナ:「ということは経常利益は借入金利の高低の影響をもろに受けるところに問題があるっていうことか。」


タツヤ:「そう。それから税前利益は経常利益から一時的な損益を加えて求められるんだけど、グローバルスタンダードな会計基準では日本ほど一時的な損益を認められていないし、税引後利益はその国の税率によって大きく異なるという問題点があるんだ。」


レイナ:「だから、そのような各利益の問題点を解消して、各国の金利や税率、会計基準の違いを最小限にした指標がEarnings Before Interest,Taxes,Depreciation and Amortization、つまりEBITDAってわけですか。」


タツヤ:「そうなんだ。だからこのEBITDAという指標はいろいろな国に多くの子会社を持つ多国籍企業を分析する際や海外の同業他社との収益力を比較する際にも用いられているんだよ。」


レイナ:「投資ファンドは日本だけでなく世界レベルで企業のEBITDAを比べて最も効率のいい先を投資先に選定するってことなのね。」


タツヤ:「そうだね。実際にはEBITDAだけでなく、負債+時価総額である企業価値(EV)とからめて、EV/EBITDA倍率という指標を利用するんだ。」


レイナ:「たとえば、企業価値(EV)が5000億円でEBITDAが1000億円だとするとEV/EBITDA倍率は5倍だし、同じく企業価値が5000億でもEBITDAが2000億円あればEV/EBITDA倍率は2.5倍になるわけね。」


タツヤ:「そう。だからEV/EBITDA倍率が低い企業ほど魅力的な投資対象ということになり、このEV/EBITDA倍率を参考に投資ファンドは買収対象を絞り込んでいくってことなんだ。」

 

【MBA講座:今回のTake Away】


◆EBITDAとは?
→Earnings Before Interest,Taxes,Depreciation and Amortizationの頭文字を取ったもの。イービットディーエーもしくはイービットダーと呼ばれる。日本語に訳すと金融収支前・税引き前・償却前・利益となる。


◆EBITDAのメリット
EBITDAは減価償却の方法や金利、税率、会計基準の影響を最小限にしているので、多国籍企業の収益性の分析や海外の競合企業との収益性を比較する際に利用される。


◆EV/EBITDA倍率とは?
企業価値(Enterprise Value)がEBITDAの何倍になるかを測る指標。倍率が低いほど投資対象として魅力が増す。

 

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2006年12月14日
 ■ マッシュアップによる市場の活性化

レイナ:「タツヤ先輩。うちの会社が展開しているインターネットカフェ、最近では競合に押されてあまりぱっとしないみたいね。」


タツヤ:「そうだね。インターネットカフェは今では成長期を過ぎて成熟期に入ってきているから、競争が激化して採算の取りにくい業界になっているんだ。」


レイナ:「そのような成熟期に入った業界でも何か業績を立て直す方法ってないんですかね?」


タツヤ:「それはいろんな方法があるよ。」


レイナ:「たとえば?」


タツヤ:「たとえば、最近流行の言葉で言えば“マッシュアップ”という方法があるんだ。」


レイナ:「マッシュアップ?それって一体どんな方法なんですか?」


タツヤ:「うん。マッシュアップっていうのはもともと音楽の世界で使われていた用語なんだけど、いくつもの曲を組み合わせて新しい曲を作っていく方法なんだ。」


レイナ:「そのいくつもの曲を組み合わせて新しい曲を作るマッシュアップがなぜビジネスと関係があるんですか?」


タツヤ:「ああ。今ビジネスの世界でも既存の商品やサービスをいくつか組み合わせて新たな需要を開拓する成功事例が続出しているんだ。現在提供している商品やサービスに他のものを加えることによって成熟期でも更に成長軌道に乗ることができるってわけさ。」


レイナ:「たとえば、どんな事例があるんですか?」


タツヤ:「たとえば、インターネットカフェの事例で言えば、コインランドリーとキッズルームを組み合わせて、総合的なレジャーランドのようなサービスを提供することによって、売上を急激に伸ばした企業も存在するんだ。」


レイナ:「コインランドリーって結構待ってる時間が手持ち無沙汰ですものね。そこにキッズルームがあれば、週末にまとめて洗濯する際に親はネットカフェ、子供はキッズルームと何かと便利ですよね。」


タツヤ:「そう。他にもメガネストアとメード喫茶を組み合わせて売上を伸ばした企業もあるんだよ。」


レイナ:「メード喫茶について言えば、この前テレビでも取り上げられていましたけど、美容室との組み合わせなんかもヒットしてて、応用範囲が広そうですね。」


タツヤ:「まあ、いわゆるオタクと呼ばれる顧客層対象のビジネスだけど、オタク市場っていうのは2005年10月の野村総研の発表によれば4110億円と非常に大きなマーケットになっているからね。」


レイナ:「新商品やサービスを開発する企業側にとっても、このマッシュアップという方法であれば新しいものを考えることなく、既存の商品やサービスを組み合わせるだけで新たなものがが生み出せるから開発コストや新商品投入リスクなどを考えた時に比較的リスクを軽減できるメリットがありそうですね。」


タツヤ:「そうだね。だから成熟期で売上が鈍化してきたら、顧客のニーズを汲み取って、どの商品やサービスと組み合わせればより高い価値を顧客に提供できるかを考えるマッシュアップを行うことによって、再び事業を成長軌道に乗せることが可能になるんだよ。」



【MBA講座:今回のTake Away】


◆マッシュアップとは?
→もともとは音楽関連の用語で複数の曲を組み合わせて新たな曲を生み出すこと。この用語がビジネスに転じて、複数の商品やサービスを組み合わせて、新たな商品やサービスを開発することを意味するようになった。


◆マッシュアップのメリット
1.ビジネスが成熟期を迎えると競争が激しくなり、売上が停滞してくるが、マッシュアップにより、これまでと違った顧客層を取り込む商品やサービスの提供が可能になる。
2.商品やサービスをゼロから開発するわけでなく、既存の商品やサービスとの組み合わせなので、比較的短期間で新商品を開発でき、リスクも軽減できる。


◆マッシュアップの事例
1.文房具販売+通信販売(アスクル)
2.生命保険+通信販売(外資系生命保険)
3.ネットカフェ+ランドリー+キッズルーム
4.メガネストア+メード喫茶

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2006年12月07日
 ■ 爆発的な需要を創出する2段階マーケティングとは?(後編)

タツヤ:「レイナちゃん。前回は2段構えのマーケティングについて話をしたよね。」


レイナ:「そうね。ソニーのPS3は現状は売れば売るだけ赤字の商品だから、大量生産によるコスト削減か、ソフトウェアの利益でその赤字を埋め合わせる2段階のマーケティング戦略をとっているということでしたね。」


タツヤ:「他にも同じようなマーケティング戦略を採用している商品やサービスがあるんだけど、何か思い浮かばない?」


レイナ:「他にも最初赤字で後から利益を取り戻すマーケティングを行っている商品があるんですか?あまり思い浮かばないんですけど・・・」


タツヤ:「探してみると結構あるんだよ。たとえば、プリンターなんかはどうだろう?」


レイナ:「プリンターですか?そういえばここ数年でプリンターの価格って大幅に下がりましたね。10年ほど前は5万円近くしたものが今では1万円以下でも買えるようになりましたからね。」


タツヤ:「実は僕がアメリカにいた10年前でも一流メーカーのプリンターが20ドル、つまり2500円で売られていたんだ。」


レイナ:「2500円?そんな価格で儲けが出るんですか?」


タツヤ:「多分赤字だと思うよ。だから2段構えのマーケティングを採用するのさ。」


レイナ:「プリンターを買った人はランニングコストとしてインクを買わなきゃいけないからインクでハードの赤字を埋めるって事ですね。」


タツヤ:「そう。ただ、プリンターの場合はメーカーの誤算があって、他社からリサイクルのインクやインク補充液などが発売されて、当初の目論見どおりに行かなくなってきているんだ。」


レイナ:「そういえば、大手プリンターメーカーがリサイクルインクメーカーを相手取って裁判を起こしたりしているのを新聞で読んだことがあるわ。」


タツヤ:「プリンターの他にも携帯電話なんかも2段構えのマーケティング戦略の典型だね。」


レイナ:「携帯電話の本体なんてただで配っているものね。私なんてこの前テレビ付きの携帯をただでゲットしちゃいましたよ。」


タツヤ:「通常ウン万円の携帯端末をただであげるんだから、携帯キャリアは大赤字だろう。この赤字を通信料で埋め合わせることになるのさ。」


レイナ:「携帯各社にとっては端末を売って儲けるよりは、利用者を増やして通信料で儲けた方が割がいいってことなのね。」


タツヤ:「そう。同じようにインターネットプロバイダなんかも契約時に数万円のキャッシュをプレゼントしてまで契約を取りに行っているだろう。これなんかもそれ以降の契約料を見込んで最初は赤字でもいずれは利益に変わるという2段構えのマーケティングを見越してのことなんだ。」


レイナ:「こうしてみるといろんな会社がいろんな商品やサービスで2段構えのマーケティング戦略を実施しているのね。」


タツヤ:「そういうことになるね。ただ、このマーケティング戦略で気をつけなきゃいけないのはいつにも増して入念な調査と慎重な戦略の立案が必要になるってことなんだ。」


レイナ:「最初が大幅な赤字からスタートするだけに、次の段階の収穫期に思い通りの収益があげられなければ、企業として大きな痛手を負うことになりますからね。」


タツヤ:「そう。さっきも言ったようにプリンタメーカーなどは最初の計画から大幅な狂いが生じている例を見ても、現実に想定外のことが起こる可能性は非常に高いと言わざるを得ないんだ。」


レイナ:「2段構えのマーケティングっていうのは消費者の需要を喚起して一気に市場地図を塗り替えることも可能だけど、逆に事業にダメージを与える可能性も高いっていうことか。そういった意味ではまさに両刃の剣ってとこですね。」


【MBA講座:今回のTake Away】

◆2段構えのマーケティング戦略とは?
→イニシャルコストとランニングコストの発生する商品やサービスでイニシャルコストの部分を赤字で提供し需要を喚起した上で、ランニングコストの部分で収益を確保するマーケティング戦略。

◆2段構えのマーケティング戦略の事例
1. ゲーム機
2. プリンター
3. 携帯電話
4. インターネットプロバイダー など

◆2段構えのマーケティング戦略実行時の注意点
→市場価格よりも極端に安い商品やサービスを提供するので当初は大幅な赤字に陥りやすい。初期段階では経営体力が必要となる。
→イニシャルコストの部分は独占する必要がある。そういった意味で他社の参入を妨げる仕組みが必要。
→当初は赤字でスタートするため、いつも以上の入念な調査と慎重な戦略の構築が不可欠になる。

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