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Lesson 62
製造コストを削減する秘訣とは?
「タツヤ先輩、長年、工業製品の分野で独占的なシェアを誇っていた子会社のABC工業のマーケットに大手企業が新規参入してくるんですって。脅威になると部長がおっしゃってましたね。」
「確かに独占マーケットに大手が新規参入してくるのは脅威だけど、僕自身はあんまり心配していないんだ。」
レイナ:「どうしてですか?」
タツヤ:「経験曲線によって大幅な値下げも可能だからさ。」
レイナ:「経験曲線?一体経験曲線ってどんなものなんですか?」
タツヤ:「経験曲線っていうのはボストン・コンサルティング・グループというコンサルティングファームが発見した理論で、簡単に言えば『累積の生産量が増加するにつれて、生産性が向上し、コストを下げることができる』っていう法則なんだ。」
レイナ:「つまり同じ製品を作れば作るほど生産の効率が上がってコストが下がってくるってことですね。」
タツヤ:「そうだね。たとえば、ABC工業の製品の累積生産量が1万個で単位当たりのコストが1万円だったとしよう。これが2倍の2万個の累積生産量になった時、コストが8000円になり、4万個では6400円になったとすると、累積生産量が倍増する度に80%のコストで生産できていることになるんだ。この80%という割合は習熟率と呼ばれ、統計的に累積生産量が倍化する毎に習熟率分のコストで生産できるようになるんだよ。」
レイナ:「でも、新規参入者がABC工業以下の習熟率だったらどうするんですか。いずれABC工業よりも低コストで生産できるようになりますよ。」
タツヤ:「調査によれば、産業ごとに習熟率は変わってくるけど、同じ製品を扱っている場合はそんなに習熟率の差はないんだよ。だから同じ製品の市場であれば少しでも早く参入した方がコスト的に見たら有利になるってことだね。」
レイナ:「へぇー、習熟率っていうのは同じ業界であれば極端な差はないのか。それじゃあABC工業は安心してライバルを迎え撃つことができるわけね。でも一体どうして累積生産量が増えればコストを削減できるっていうことに繋がるんですか?」
タツヤ:「うん。それについてはいろいろな要因があるんだ。まず考えてすぐに思いつくのが労働者の生産性の向上だろう。数多く生産することによって労働者が慣れ、生産性が向上するって訳さ。他にも長く製造することによって作業が専門化してきたり、生産工程が改善されたり、製品が標準化されたり、生産設備が向上したり、といろいろな要因で生産性が向上してコスト削減が実現されるんだ。」
レイナ:「そうね。単純に考えても、製品を作り慣れてくれば、作業効率は飛躍的に向上するからその分コストが下がるのは当然のことね。このような経験曲線は企業の経営戦略上どのように活用することができるんですか?」
タツヤ:「最初に言ったように、たとえば独占市場の場合はまずは価格を高めに据え置いておいて、新規企業が参入してきた段階で経験曲線によるコスト削減効果を利用して大幅に価格を下げて新規参入のうまみを無くしたり、経験曲線によってコストが下がることが予測されていれば、それを織り込んで戦略的に低価格で製品を提供し、競争的優位に立つことも可能になるんだよ。」
レイナ:「へぇー、経験曲線という理論を知っているかいないかで経営戦略に大きな差が出るんですね。」
【MBA講座:今回のTake Away】
◆経験曲線とは?
→累積の生産量が増加するにつれて、生産性が向上し、コストの低減が図れるという法則
◆経験曲線の発生理由
1.労働者の熟練
2.作業の専門化、作業方法の改善
3.生産技術の改善
4.生産設備の能率向上
5.製品の改善、標準化など
◆経験曲線の経営戦略への応用
1.経験曲線によるコスト低減を織り込んで低価格戦略を実現する
2.独占市場の場合、新規企業が参入した時点で価格を大幅に引き下げ、競争優位を確立する
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経験曲線につきましてはBCGのHPもご参照下さい。
⇒ http://www.bcg.co.jp/whatsbcg/xpcurve.html
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